さて、ここで紹介されているコルホーズ市場とは、別名“Рынок”(ルイノク)と呼ばれているもので、日本語では自由市場などとも訳されています。
このページに載っている豊かな食料品は当局のヤラセでも誇張でもありません。ソ連だって「ある所にはある」のです。品質もよく、新鮮で、当時のソ連が、実は肥沃な大地に恵まれていたことを物語るものです。
しかし、ここで売られてるものは、バカ高いことでも有名でした。手元の資料(80年代初頭)によると、冬場のモスクワで品薄の時期は、トマトやキュウリが1キログラムで8ルーブルから10ルーブル(2500~3000円)。ホウレンソウ一把が3ルーブル(1000円)と、日本の基準でもとんでもない値段だということがわかります。
モスクワなど都市部の住人の中には、急病人が出た時しか、ルイノクは利用しないと決めていた人もいたのだそうです。
こうした新鮮な農作物は、コルホーズで働く人々の“自由耕作地”で生産されたものです。もしかしたら…とグーグルアースで調べてみたら、ありました。
ウスリースクの近くですが、道路に沿って並んでいる家がわかりますか? その後ろに広がる小さな短冊状の土地が、自由耕作地の名残です。いや、今もあるんだなあ。
平均すると0.5ヘクタールぐらいで、一応、国家から借りている土地ということになります。ソ連全体から見たら、全耕地面積の3%にも満たない、この狭い土地が、当時のソ連人民の胃袋を支えていました。一説によるとジャガイモは総生産量の61%。野菜や肉、牛乳もそれぞれ29%、卵は34%もの比率を占めていたというからハンパじゃありません。
ちなみに国営商店は“Магазин”(マガジン)と呼ばれています。パン、肉、野菜、酒類、牛乳・乳製品といったように、カテゴリーごとに分かれていて、まとめて買おうにも一軒ずつ回らなくてはいけないという不便さ。しかも品切れ状態は当たり前で、運良くあっても品質の悪いものだったりしたそうです。
ソ連では輸送や保管の分野が制度的にも設備的にも遅れていて、どんなに豊作でも、都市部に着くころには30%が腐ってしまうという報告もされていました。
今のロシアでは、ルイノクというと株式市場とか金融市場のこと。マガジンはスーパーマーケットやショッピングセンターのことになっています。時代は変わるものですね。
次の話題は、モスクワのポクロン丘に建設が予定されている大祖国戦争戦勝メモリアルの記事です。なんと1958年から計画されていたのですが、ようやく具体化。と思ったら・・・ソ連崩壊です。
完成したのは1995年。一応、対独戦勝50周年に間に合ったからいいけど、気の長いプロジェクトだったんだなーと。
正式名称は“Мемориал победы на Поклонной горе“で、この計画がどんな風に実現したのかを見比べてみるのも面白いかと思います。ちなみにこの施設、記事で紹介されている時には無かったものが追加されています。
それはロシア正教の聖ゲオルギー教会。(金色のネギ坊主です)
大祖国戦争の英霊たちも、まさか50年目にして教会に見守られて眠ることになるとは、思わなかったでしょうね。
* * *
最後は画像なしですが、「ソ連自然保護の旅」という記事から。
ソ連もそれなりに環境保護には力を入れてまして、それによると「ソ連国家水質気象・自然環境監視委員会」なるものが存在するとのこと。略称“Госкомгидоромет”「ゴスコムギドロメト」って、悪の組織か怪獣の名前だぞ。
面白いのは責任の範囲で、ゴスコムギドロメトでは水と大気の状態をモニタリングしてますが、土壌汚染の監視は農業省の管轄なのだと。
出たな、お役所。
農業省は家畜の他に野生動物の保護も担当しており、絶滅危惧種を調査した「レッドデータ」も農業省が発行しているのだそうですが、ゴスコムギドロメトの担当者いわく「農業省の仕事は不十分」とチクリ。
ちなみにソ連では「自然環境」と「(自分の)周囲の環境」というふたつの用語があるそうですが、後者には「騒音」が含まれ、「この問題はゴスコムギドロメトの管轄ではない」とのこと。
ソ連の官僚機構の実体が垣間見える記事でした。
それでは、また~。
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