暑い日が続いてますが、皆様お元気でしょうか?
どうやら7月中に更新できそうです。
今回は国際婦人デーが特集されてます。女性の権利の向上と社会参加の促進を求めるこの記念日は毎年3月8日。日本で話題になることはあまりありませんが、バレンタインデーなんかより、ずっと重要な日として認識されてもいいのではと思います。
決してチョコがもらえない人間のやっかみではありません。
ソ連では1917年の二月革命(当時のロシアはユリウス歴)と重なることから、歴史的・政治的に極めて重要な日とされており、実際、祝日になっております。現在でもこの習慣は残っており、職場の男性は同僚の女性に花を贈ったりします。夫婦間においても奥さんの誕生日、結婚記念日と並ぶ3番目の記念日で、プレゼントを忘れると旦那の査定がダダ下がりするそうです。
今日のソ連邦でも、ソ連社会に生きる様々な女性たちにスポットを当ててますが、内容としては「女性としての生きがい」がテーマで、「子育てが生きがい」「仕事が生きがい」「ダンナが家事に非協力的」などなど、夫婦間のよくある話が展開しております。
ちなみに表紙の女性はタチアナ・アノジナ博士。アエロフロート(ソ連国営航空)に所属する航空管制自動化国際研究実験センターの所長で、国際線を飛ぶ旅客機の運行管理を自動化するシステム開発を指揮しているとのこと。年令を書かないのはマナーですな。後述するページの写真によれば10月革命勲章と労働赤旗勲章を授与された人だというのがわかります。
科学技術の分野で指導的な役割を果たす女性をもう一人。脳科学者のナタリア・ベフテレワです。彼女が所属するレニングラードのソ連科学アカデミー実験医学研究所は、あの「パプロフの犬」で有名なイワン・パブロフがこの世を去る直前まで働いていた研究施設として有名です。
それはさておき、ソ連で脳科学・精神医学というと、あまりいいイメージがありません。ソ連では反体制活動を行った者は強制収容所に送り、それが軍や治安機関の人間だったりした場合はスパイのレッテルを貼ります。でも、中には著名で人望の高い知識人などが反旗を翻す場合もあり、この場合、当局は「○○氏は精神に異常をきたした」として精神病院にブチ込みます。ロシア語にもキチガイ病院に相当する俗称があり、直訳すると「バカの家」という身もフタもない名前。
もちろん記事のナタリアがそういうことに関わっているわけではありません。むしろ記事を構成するインタビュアーの方が予想の斜め上を行ってました。
「核戦争を容認できると考えている人たちの脳の状態を特徴づけられるか?」
「核戦争の容認者を自分の患者に持ったことはない。しかし、容認者のうちの2~3人は全てが許される地位、超人的地位に就いている事実が、すでに多くのことを医者に語っている。これは医学では病的と評価することになっている状態の確かな兆候です」
核戦争をやらかすことを躊躇しない政治指導者を異常者と呼びたくなる気持ちはわかりますが、これ、ソ連の指導者にも当てはまるんじゃないでしょかね。
ちなみに別の質問。
「脳の働きを活発にして普通の人を天才にすることはできるか?」
「今のところ、我々はそれには反対です。問題は道徳的理由にだけあるのではない。そのためにヒトやヒトの脳がどれだけ高い代償を払うか、我々がまだ知らないからです」
・・・良かったな、アルジャーノン。
さて、気分をかえて核戦争(ヲイ)。
2度のソ連邦英雄と、レーニン勲章3回授与の栄光に包まれた宇宙飛行士、ピョートル・クリムク空軍少将の寄稿です。アメリカのレーガン政権が押し進めていたSDI構想を批判しております。
もし、これが完全に実現していれば、アメリカは絶対安全な状況下でソ連を一方的に核攻撃できるわけで、相互確証破壊の概念が根底から崩れます。今でこそ我々は、SDIなるものが絵に描いたモチだったことを知っていますが(いや、当時もかなりマユツバだったのですが)、ソ連はただでさえ財政状態が厳しいのに巨費を投じて対向措置の開発に血眼になり、国際世論の高まりでアメリカの動きを少しでも鈍らせようと涙ぐましい努力をしています。でも宇宙空間の軍事利用は、デブリを増やすだけでロクなことにならないので、この論文は今でも通用する内容にも思えます。
ところで宇宙開発といえば、ソ連ではカザフ共和国のバイコヌール基地です。この号ではカザフ共和国の紹介記事も出ています。写真はコクチュタフ州のボロボエ湖という場所にあるスフィンクスの岩。なかなか面白い地形です。カザフは広大な国土を持ち、気温差の激しいステップの土地です。帝政ロシアの頃は流刑地でもあり、こんな布告が残っています。
「小市民ニキフォル・ニキチンは、月への飛行に関する不穏な言動の罪で、カザフスタン・バイコヌールへ追放する」
宇宙旅行の夢を熱く語った人が送り込まれた不毛の大地、20世紀になってホンモノの宇宙基地が出来るなどとは、ツァーリも想像できなかったでしょうな。
そのカザフ、砂漠のど真ん中にパルハシ湖という巨大な湖があります。湖面の半分は淡水、半分は塩水で、決して混じりあうことがないという不思議な湖。この現象についてカザフスタンには伝説が残されています。
大昔、アラタウの山の中にバルハンという名の魔法使いが住んでいました。
彼には愛する娘、美しいイリがいました。イリは貧しい羊飼いのカラタルが好きでしたが、父親は娘を貧乏人に嫁がせたくありませんでした。そこで愛し合う二人は新月の夜、駆け落ちします。バルハンは一番優れた部下の戦士に後を追わせますが、彼らも追いつけません。
怒った魔法使いは娘と羊飼いを川に変えてしまい、自分はその流路に横たわって湖になりました。
今でもバルハシ湖には2本の川-イリ川とカラタル川が流れ込んでいますが、その水が混ざり合うことはありません。水は湖の中で、まるで壁に隔てられているかのように分かれているのです。
最後はソ連の切手です。
ソ連はやたらと記念切手を発行することで有名でした。毎年100種類以上というのが多いのか少ないのかはわかりませんが、切手コレクターの初心者にとっては手軽に外国の切手が手に入り、ソ連としても外貨が稼げるので双方にとって得だったのでしょう。反面、希少価値は無いので、マニアからは見向きもされなくなるとか。
もちろん本当の珍しい切手は、ソ連でも熱心なマニアによって取引されてたようで、全ソ切手収集協会なんてものがあります。このページは協会員のイーゴリ・ザハロフ氏の紹介による最近(1987年)の記念切手から(見づらいのでテキストを色分けしてます)。
1:新年記念切手「新しい年、10月大革命70周年の年、おめでとう!」 2:ボロネジ市(ロシア共和国)400周年記念。 3:アナトリー・ノビコフ(作曲家)生誕70周年記念。 4:チェリャビンスク市(ロシア共和国)250周年記念。 5:シャウリャイ市(リトワ共和国)750周年記念。 6:孫文(中華民国初代大統領)生誕120周年記念。 7:ミハイル・ロモノーソフ(ロシア科学の父)生誕275周年記念。 8:オルジョニキーゼ(党活動家)生誕100周年記念。9:ユネスコ創立40周年記念。 10:第27回ソ連共産党大会記念「科学技術進歩の路線にそって」 11:第27回ソ連共産党大会記念「国民の福祉は党の最高目標」 12:十月社会主義大革命69周年記念(1986年)。 13:第27回ソ連共産党大会記念「構想のエネルギーを行動のエネルギーへ!」 14:第27回ソ連共産党大会記念「社会主義と平和は切り離せない!」 15:ヤコブレフ設計局シリーズYa-1 16:ヤコブレフ設計局シリーズUt-2 17:ヤコブレフ設計局シリーズYak-18 18:ヤコブレフ設計局シリーズYak-50 19:ヤコブレフ設計局シリーズYak-55
さて。今回はこんなところでしょうか。
なんかとっちらかった紹介になってしまいましたが、
あまり気にせずにこんな調子でこれからもチマチマ更新します。
とりあえず、でわでわ~。
ゲームラボ(三才ブックス)でも鋭意、連載中です。こちらよろしく~。