2013年1月6日日曜日

今日のソ連邦 第18号 1986年9月15日


どもです。
時間のあるうちに更新しておかないと。で、前回の続きです。
誰も覚えてないグッドウィル・ゲームスがまだ特集されてます。
表紙は平均台の競技。
オクサナ・オメリヤンチクというソ連の選手です。
ロシア語における女性の姓は語尾にaがつく、というのは日本でもそれなりに広まってきた法則ですが、彼女はオメリヤンチカではありません。結構、例外があるのですね。(追記…彼女はウクライナ人らしいです)
ちなみに彼女は女子体操個人総合で3位に入賞しました。


この大会では6つの世界新記録、8つの大陸新記録、90以上の各国の新記録が出たそうで、結果はそれなりだったようです。
ちなみに世界新記録の内訳は
・水泳男子個人800メートル自由形=7分50秒64 ウラジーミル・サリニコフ(ソ連)
・自転車競技男子団体4000メートル追い抜き=4分12秒830 A・クラスノフ、S・フメリニン、V・シプンドフ、V・エキモフ(ソ連)
・陸上競技7種女子=7148点 ジャッキー・ジョイナー=カーシー (米国※日本で有名なフローレンス・ジョイナーさんとは別人です)
・自転車競技男子スプリント200メートル計時=10秒224 ミハエル・ヒュブナー(東独)
・陸上競技男子棒高跳び=6メートル01 セルゲイ・ブブカ(ソ連)
・自転車競技女子スプリント200メートル計時=11秒489 エリカ・サルミャエ(ソ連)
となっております。(国籍は当時のもの)


では、次の特集。
ソ連で盛んな低温工学に関する記事です。相変わらず大雑把な環境で精密な作業をしている感じのソ連の研究所ですが、ホコリとか大丈夫なんかな。
さて、ここで言う低温工学とは「極低温工学」のことでマイナス153度C以下の温度のもとで起こる現象と、そうした環境を作る装置の開発に関する研究のことです。
ソ連ではピョートル・カピッツァなる人物がその嚆矢とされていますが、彼が最初の低温装置を開発したのは1939年から40年にかけて。まさに独ソ戦が始まろうとしている頃です。
装置で作られた液体窒素は冶金工学の分野に変革をもたらしたとあります。
高炉の場合、生産性は1.5倍になり、コークス消費量は25%の削減に成功。ソ連が早くから冶金の分野で発展をとげ、主に戦車の装甲などに生かされたことは有名な話ですが、低温工学の発展が支えていたのかもしれませんね。
なお、この記事では超伝導についても触れられていますが、日本ではこの手の話題は最近、聞かないなぁ。あと「人類は古くから低温の有効性について気づいていた。打撲症の治療で患部を冷やすのは昔から行われていることだ」ともありますが、それって低温工学なんでしょか? まぁ、例えとしてはわかりやすいですけど。

でも永久凍土はずっと温度が上の方なので、この記事には出てきません。ソ連=シベリア=寒い=永久凍土かと思ったんですが。
余談ですが、日本でも永久凍土の研究成果は日常的に利用されています。永久凍土は水を通さない性質があるので、地下鉄工事などでは冷却ボルトを土壌に打ち込み、地面を凍らせてしまいます。そうすることで坑道に水が吹き出す心配をせずに、トンネル掘削ができるというわけです。

お次はリトワ(現在のリトアニア共和国)で復活しつつある農村芸能についての話題。
失われつつある民族文化の復活というのは、どこでも行われていることですが、ソ連でも例外ではなかったようです。でもリトアニアの農村から急速に伝統芸能が廃れていった時期というのが、20世紀初頭って・・・年代をぼやかしてるけど、それって社会主義革命の頃じゃないのかなあ。
農村と農民を急激に集団化していったら、そりゃ伝統芸能も無くなるような気がするんですが、同志スターリン、どうなんでしょう?(命知らず)
それはそうと、この劇団、果たして今もリトアニアで存続しているのでしょうか?

最後は恒例のロシア語散歩。
今回は地名の隠れた意味です。
ソ連にはアクサイという名の川が4つあるそうです。
そのうちの二つは北カフカス、残りはカザフスタンとキルギス。同名の街も3つあり、キリギス、ボルゴグラード(旧スターリングラード)、ロストフ・ナ・ドヌーの近郊です。
どれもチュルク語系の名前で、アクは白、サイは川という意味なのだそう。
川の名前はその特長から名づけられることが多く、チーハヤ(音無川)、ブールナヤ(激流)、スラートカヤ(甘川)などがあります。典型的なのがアクサイのように色から命名される例で、ベーラヤ(白川)、クラースナヤ(赤川)、チョールナヤ(黒川)などがあります。
もっとも水質から来る色とは限らないようで、ベーラヤは濁流であることが多く、チョールナヤは流れがわからないほど穏やかな川か、冬でも凍結しない川のことを指します。白い雪景色をバックにすると、川が黒く見えるからだと言われています。
流れの状況や周囲の景色で命名されるということは、一本の大河が地域によって違う名前になるということでもあります。

湖はシベリアに何百とありますが、これらはすべてライダ(ヤクート語で湖沼)と呼ばれます。数が多いのでいちいち名前を付けてられないようです。ロシア平原にある湖も単純にオーゼロやオゼルコー、オゼルツォーなどと呼ばれます。
ちなみにバイカル湖はチュルク語で「豊かな湖」という意味。でも地元のブリヤート・モンゴル人は「ダライノール(聖なる湖)」と呼んでるそうです。エベレストとチョモランマの関係みたいなものでしょうか。

ソ連には大河が沢山ありますが、昔は運河がなかったため、船乗りたちは船を陸にあげて別の川に運んでいました。この時の曳き船作業をロシア語でボーロクと言います。ここからボロコラムスク、ボロークなどの街の名前ができました。
また、黒海からバルト海へつながる通商水路が、かつてスモレンスク市の近くにありました。船乗りたちはこの街に到着すると船底にタール(スモール)塗り直すのが恒例だったようで、スモレンスクの名前はここから来ています。
最後に「ウラル」の語源について。
エカテリーナ2世の時代、この地域一帯で大規模な農民蜂起が起こりました。口火を切ったのはヤイク川の近くに住んでいたヤイク・コサックで、指導者はエメリヤン・プガチョフ。有名な「プガチョフの反乱」です。しかし蜂起は失敗に終わり、プガチョフは処刑され、農民たちの多くが流刑されました。
エカテリーナ2世は、この血なまぐさい農民蜂起の記憶をぬぐい去るために、最初の蜂起の場所であるヤイツキー市とヤイク川の改称を命じます。
1775年、ヤイク川はウラル川になり、周辺の山々もウラル山脈となります。この名前はこの地域に住むマンシ族やバシキール族の言葉で、単なる「山」という素っ気ない名前なのだそうです。

今回は、こんな所で。
でわでわ~。


4 件のコメント:

  1. いつもチェックしてるんですがコメントは初めてです。こちらでははじめまして。川の名前の項、チーハヤとブールナヤが最初に来たので「ちはやぶる」の語源はこれなのか?という斜め上の思考がわいてきて困りました(主に自分の思考回路に対して)。

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  2. どもです。「ちはやふる~」も激しい勢いという意味だそうで
    ブールナヤと当たらずとも遠からずというのが面白いですね。
    今年もよろしくです。

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  3. ききかかじりですが、○○コという名前はウクライナ人系らしいです。(男性限定??)
    ベレンコ、シェフチェンコ、最近ですと大鵬の父マルキャン・ボリシコ

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    1. ご指摘ありがとうございます。他にも○○スキーなどもポーランド系にあったりしますし、この辺の命名法則だけで、かなりヘビーな研究分野になりそうですね。今後ともよろしくお願いします。

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