2014年10月26日日曜日

今日のソ連邦  第4号 1988年2月15日

なんとか10月中に更新できそうです。

 前回の1月1日号ではゴルバチョフ書記長の著作「ペレストロイカ」(講談社刊)の序文が紹介されていましたが、この号ではそれを読んだ3人の日本人の感想が紹介されています。 

 九州大学教授の荒巻正憲氏は「全人類への警告と行動の指針」。女性労働問題研究者の柴山恵美子氏は「女性労働者の地位向上に期待」。国際問題評論家の斎藤玄氏は「グローバルな背景に注目」と題してそれぞれ論評しています。(肩書はいずれも本誌掲載当時のもの)
ソ連の広報誌という性格上、批判的なトーンは皆無でゴルバチョフ書記長のリーダーシップに期待する内容が多かったのですが、ソ連崩壊という「オチ」を知っている身としてはなんとも言えない気分です。
 他の記事で目に留まるのは、社会学者ビタリー・トレチャコフ氏によるコラム「ソ連の生活の質」。今回が最終回です。テーマは「雇用問題」。この分野については、さすがにソ連はドヤ顔であります。
 統計によると、1928年4月の都市部における失業者数は157万人もいたのが、1930年10月には24万人に激減し、同年末にはついにゼロとなり、それは現在も続いているとのこと。そうだよなぁ。そのために革命やったようなもんだもんなぁ。

 では、失業がないのに「雇用問題」とは?
 トレチャコフ氏によると、ソ連では潜在的な余剰人員が1000万人います。これらは、本来ひとりで十分なはずの職場に必要以上に配置されている人員で、将来的にソ連経済を脅かすかもしれない存在と見なされています。 
 
 しかし、トレチャコフ氏は楽観的かつ強気です。
 それら余剰人員は工業生産の発達(つまり工場を増やし、機械の稼働率をあげる)ことで400万人を吸収することが可能。さらに現在の貧困なサービス産業を拡充すれば1300万人から1900万人の雇用が創出され、余剰どころか、むしろ人手不足が発生するだろうとまで言っています。 
 
 このコラムではトレチャコフ氏がさまざまな分野を10点満点で採点してますが、雇用については9点を付けています。ちなみに他の分野ですと「健康・7点」「食生活・8点」「衣料・6点」「教育・9点」「家庭の幸福・8点」「サービス部門・3点」「消費と貯蓄・7点」「住宅・6点」「休息と娯楽・6点」「社会保障・7点」「コミュニケーション・6点」となっています。

 さて、3番目の画像ですが、普段はスキャンしてない表2ページの広告です。今は無きソ連物産専門店「白樺(ベリョースカ)」。そこから十月革命記念のルーブルコインが発売されるというもの。なかなかいいお値段ですが、材質が明記されてないのが残念です。切手などもそうですが、ソ連ってこういう外貨稼ぎについてはフットワーク軽いんですよね。

次は表紙にもなっているコワモテのおじさんの特集記事。「脊椎指圧療法の名人カシヤン医師」その人です。
 ニコライ・カシヤンはウクライナのコペリャキ市に診療所を構えています。治療はシンプルそのもの。指先で脊椎を触り、症状を見極めると、圧力を加えるだけ。いわゆる指圧とかカイロプラクティクと呼ばれる治療法です。
 画像は治療の様子。12歳の女の子のエロい背中が見えますが、左右の肩甲骨が明らかに不自然なのがわかります。
 ただ、このカシヤン。一筋縄ではいかない人物でもあります。診療が始まるのは決まって真夜中。医学界からは「ある種の神秘主義ではないのか?」との疑問が出されています。
 これについての彼の答えは明快です。この人、確かに医者なのですが、昼間は別の仕事をしています。正式な職業は「身体障害者専門の寄宿学校における精神科医長」というもの。つまり指圧は副業なのですな。
 それでもカシヤンのところには大勢の患者が押し寄せます。もちろんすべて治せるわけではありません。彼が治すのは脊椎に原因があるものだけ。もし違っていれば「これはわたしのところではない」と即答します。

 カシヤンは若いころ、軍の衛生兵でした。しかし、肺病をわずらい除隊を余儀なくされます。同僚の医師たちも手の施しようがなく、彼は死を覚悟して帰郷するのですが、そんな彼を救ったのが祖母でした。祖母は革命以前の古いロシアの民間療法に精通し、薬草やアナグマの脂肪などを駆使して彼の命を救ったのです。また、カシヤンの父は近所でも評判の「骨接ぎ」でした。ろくに読み書きもできず、医学書とも無縁の人物でしたが、家の中にはそこかしこに人体骨格や頭蓋骨があり、カシヤンはそれを参考書として脊椎の構造を学んだのです。

 さて、この記事の最後は興味深い記述で締めくくられています。
 もともとソ連の有名な雜誌「アガニョーク」の記事なのですが、記者はこう言ってるのです。
「この記事が発表されれば、編集部とカシヤンのもとに手紙や依頼が殺到するでしょう。しかし、どうか手紙を出さないでください。カシヤンも編集部もこれ以上の患者を助けられる状況にはありません。かわりにコペリャキ市を管轄する総医長、あるいは地区保健部、または州保健局に、医師の診断書と紹介状を送ってください。手紙が殺到すれば、それが連邦保健省を動かし、この課題に国全体として取り組むようになるはずです」

 つまり、カシヤンの記事は、満足な治療を受けられない人々が大勢いる現実を浮き彫りにし、不十分な医療体制の拡充を訴えるものだったわけです。回りくどい気もしますが、いかにもソ連らしい記事とも言えます。

次はラトビア共和国の首都リガにあるVEF(電機生産合同)の食堂についての記事。VEFはラジオや電話機、小型コンピューター通信ステーション、同時通訳装置などを生産し、世界80カ国に輸出している電機メーカーです。他にもスポーツ競技場の電光掲示板やボブスレーのソリなども作っているとか。
 
 この工場では給食コンビナートの機械化に取り組み、サナトリウムやスポーツ施設、食料品店や幼稚園などを備えた複合施設を整備しました。つまり出勤してくれば、工場内で大抵の用事が済ませられるというわけです。いかにも機械メーカーらしく、関連機器類をすべて自前で設計し、組み立てや設置も社員が行ったとのこと。画像には食堂の様子が映っています。

 入り口は自動改札で60コペイカを入れるとゲートが開く仕組み。これはそのまま社員食堂のランチ代になります。同じ規格の4つのトレーには主菜、副菜、スープ、デザートなどが盛りつけられています。テーブルの中央には回転式のケースがあり、ナイフやフォークなどのカトラリー、その反対側にはパンが入っています。真ん中は紙ナプキン、塩、コショウ、あとはマスタード。ロシアでは黒パンにマスタードを塗って食べることが多いんですよね。
 また、毎日の食事代を給料日に一括して差し引くという人にはカードがあります。端末にはロシア語とラトビア語が併記されています。

続く記事は砂漠の古都ヒワ。ウズベク共和国の首都サマルカンドから北西に630キロほどの場所にあります。ヒワは16世紀に栄えたヒワ汗国の首都で、宮殿と城砦を兼ねた内部都市を持ちます。ここはイチャン・カラと呼ばれ、本来はここがヒワの都市部。現在では革命後に整備された新市街と合わせた全体がヒワの街です。

 ヒワの民族衣裳は独特のカラフルな柄で、これを現代風のワンピースに仕立てたものが主流。スタイルのいい女性が着るとエキゾチックな魅力をかもしだすのですが、この地方では眉墨でマユゲをつなげるのがオシャレなメイクとされているので、個人的にはちょっと残念・・・。所変われば美人の定義も変わります。


 最後はガラリと変わってコミ自治共和国の民族衣裳。バレンツ海に面し、チュメニ州、スベルドロフスク州、アルハンゲリスク州に囲まれたヨーロッパ北東部の少数民族の国です。
 首都はシクチフカ。総人口は100万人ちょっと。面積はフランスよりやや小さいぐらい。ここはウィンタースポーツが盛んで、ソ連のスキー選手の強化キャンプがいくつもあることで有名です。

 コミ人はフィン・ウゴル語派に属し、文字はロシア文字に似たものを使っています。コミ語の出版物で代表的なのは新聞「ユグイド・トゥイ(明るい道)」や雜誌「ボイブィブ・コドズブ(北極星)」など。ちょっと辞書とか欲しくなってきました。ヨーロッパの少数民族も数え上げたらキリがないです。


今回はこんなところで。
最近、滞りがちですが、なるべくがんばって更新しますのでよろしくです。
でわでわ~



ゲームラボ(三才ブックス)でも鋭意連載中です。こちらもよろしく~。  


2014年10月11日土曜日

告知です。

大日本絵画さんから出ているスケールアヴィエーションという雜誌に、ノーズアート・クィーンという企画があります。その最新号(2014/11)に衣装とかパーツを提供しました。実際はスタイリストさんが自由にアレンジしたものをモデルさんが着ています。どんな風になっているかは誌面でお楽しみください。当たり前の話ですが、モデルさんはスタイル抜群でとても美しい方です。(なんと、2013年のミス・ユニバース日本代表!)

実際に提供したものの一例。
1988年規定に基づく空軍士官の礼装です。
キャプションは担当編集さんに説明するためのもの。



さて。肝心のブログですが、またしても更新が滞っております。
申し訳ありません。
そろそろ時間がとれそうなので今月中には更新したいところであります。

でわでわ~。

ゲームラボ(三才ブックス)でも鋭意連載中です。こちらもよろしく~。